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シリーズ・日本映画の海外公開版を考える7「日本沈没」




今回は1972年公開の「日本沈没」で。
小松左京の同名ベストセラー小説を映画化したこの作品は日本で空前のヒットを記録した。



「日本沈没」はこの時代流行したハリウッドの大災害をあつかう映画とは一線を画し、沈没する日本を襲う天変地異だけでなく、祖国を失う日本人の悲劇を描き、日本とはなにか、日本人とはなにかまで問いかけるきわめて優れた重厚な映画だった。


この作品は一九七五年、アメリカでも公開された。

アメリカでの上映権を獲得したのはB級映画の帝王として名高いロジャー・コーマンの率いるニューワールド・ピクチャーズ社であった。


ロジャー・コーマンは低予算映画を得意とした映画作りをすることで有名である。

ただ、新人の育成にも力を入れており、まだ無名だったフランシス・F・コッポラをデビューさせたことで知られている。


ロジャー・コーマンは大ヒットするような映画は作らないが、まあまあヒットする程度の映画をアメリカで次々と発表しており、その手腕は自らが書いた自伝『私はいかにハリウッドで100本以上の映画をつくり、10セントも損をしなかったか』に詳しく記されている。



そんな彼にとって優れた特撮シーンのある「日本沈没」は格好の作品だった。


コーマンにとって「日本沈没」は当時流行していた災害パニック映画のひとつに過ぎず、その深遠なテーマなどは無用だった。

オリジナル版は2時間20分を越える超大作だが、コーマンはアメリカ人俳優を使った新しいシーンを撮り足した上で、なんと一時間近く短くしてしまった。


アメリカ版のタイトルは「Tidal Wave(大津波)」。

このアメリカ版「日本沈没」は方々探したがついに見ることができなかった。

ただ、ハリウッドに行った際に立ち寄った映画専門の古本屋で店主が「日本沈没」のことを知っていて店の奥から「Tidal Wave」のポスターを探し出してくれて筆者に売ってくれた。

ポスターには巨大な津波が町を襲いかかる絵が描かれている。

この町はどう見てもアメリカの町である。

さらに絵の下にはハリウッドスターのローン・グリーンの写真があり、大きく「ローン・グリーン主演」と書いてある。

(グリーン)


ローン・グリーンはアメリカではテレビシリーズ「ボナンザ」、「ルーツ」や「宇宙空母ギャラクティカ」で知られる有名な俳優だが、オリジナルの「日本沈没」には、もちろん出演していない。



このポスターを見てこれを日本映画だと思う人はいるだろうか。


アメリカ版「日本沈没」は見ることができなかったが、手元にある資料からその再編集や追加されたシーンがどのようなものであったか推測することができる。


物語は大体オリジナル版と同じように進行したようだ。

日本海溝の調査や小野寺と玲子の関係などもきちんとカットされずに残っていたようである。


問題のローン・グリーンが登場するのは物語の中盤、D2計画が発動され、ひそかに各国に日本人の移民受け入れを打診するところだったらしい。この際、日本の外交官と面会したアメリカ国連代表を演じたのがローン・グリーンであったと資料に記されている。

ただ、ポスターに「主演ローン・グリーン」と記されているにもかかわらず、ローン・グリーンが出演するシーンはたった二ヶ所に過ぎなかったようだ。


もうひとつのローン・グリーンが登場するシーンは国連の日本救済特別委員会のシーンだったようだ。

ここでグリーンの演じる国連代表が日本からの移民の受け入れを渋る各国の代表者に対し、日本の現状を沈みかけた船に例えて各国に移民受け入れを説得したのだそうである。


そのほかにも多数のシーンが再編集されていたようだ。

その際たるものはラストシーンである。


オリジナル版では地球のどこかで離ればなれになってしまった小野寺と玲子が列車の外を眺めて終わる。
それに対しアメリカ版ではどうやら小野寺と玲子が同じ列車に乗っているかのように再編集されていたようである。


アメリカ版だけを見た人物の書いた物語の解説には「小野寺と玲子は無事に脱出することができた。二人は別々の車両に乗っているものの、シベリアを走る列車に乗っていた」と記されている。


オリジナル版では小野寺と玲子が引き裂かれて地球の反対側にいる姿を描き、その背後にはこの二人のように引き裂かれてしまった家族や愛しあう人々がいたことを暗示しているが、アメリカ版ではまったく意味不明なラストシーンになってしまっている。

小野寺と玲子が無事に一緒に脱出できたのだとしたら、なぜ同じ列車の別々の車両にいるのか説明がつかない。


英語の吹き替えもひどいものだったらしい。声優も使わずに吹き替えをしたようだ。

アメリカ版の吹き替えで声を演じた人物のひとりにジョー・ダンテがいる。

ジョー・ダンテは後に「ピラニア」、「グレムリン」、「インナー・スペース」などを作ったことで知られる映画監督である。



アメリカ版「日本沈没」が公開された頃、彼はロジャー・コーマンのもとで映画監督になるための修行をしていた。


アメリカ版の出来はかなり酷いものだったようだが、幸いロジャー。コーマンはオリジナル版に英語字幕をつけた上で小規模ではあるがアメリカ公開したようである。

Cinefantastique誌にオリジナル版とアメリカ版の両方を見た映画評論家のコメントが載っている。
それによると、アメリカ版は「(オリジナル版に対する)冒瀆にすぎない」そうである。


前述のロジャー・コーマンの自伝に「日本沈没」のことが記されている。

彼の目から見るとオリジナル版の「日本沈没」は「とてもそのままでは上映できる代物ではなかった」そうである。

たしかにコーマンにとって、深いテーマを持ったオリジナル版の「日本沈没」は彼の手にはあまる「とても上映できる代物」ではなかっただろう。


それを知った上で述べているのなら確かにその通りだと思うが、そうでないとしたら、それはアメリカ人の高慢さから来る憎むべき無知だと言えるだろう。


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  • Date : 2016-12-11 (Sun)
  • Category : 映画
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