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「昭和天皇実録の謎を解く」を読む

編纂に約24年、実に10000ページにもおよぶといわれる「昭和天皇実録」。

歴史が専門でもない人にはとても読みこなせる代物ではない。
しかし、戦後70年経過してなお、歴史問題に揺れる日本に棲む我々としては「教養」の一環としても知識としては持っておきたいのが「昭和天皇実録」だ。

そんな「昭和天皇実録」を4人の歴史学者が対談形式で読み解いた本作は現代人必読の書だ。


素人の私にとって学ぶことはたくさんあった。

昨年の大河ドラマ「花燃ゆ」で話題になった初代群馬県令の楫取素彦が昭和天皇の養育係の有力候補だったとは初めて知った。




また、昭和天皇が信頼を寄せて、国内の調査を内々にお願いしていたと思われる元台湾総督・長谷川靖に関する記述も興味深かった。保坂氏はこの長谷川氏に興味を持っていると本書で述べているが、ぜひ、独立したノンフィクションにしていただければと思う。ちなみに長谷川靖の孫はあの映画監督、実相寺昭雄だ。




さらに戦争末期に昭和天皇がアメリカの短波ラジオから情報を得ていたことが考えられることや、居間には戦時中からダーウィンとリンカーンの肖像画あ飾られていた、など全く知らなかった事実が読み解かれていて、読んでいて全く飽きない。

昭和天皇がA級戦犯となった人物に対し、どのような考えを持っていたのか、についても保阪氏と半藤氏を中心に実録とその他の資料から論理的に考察しており、大変興味深い。

東条英機に関しての記載も興味深い。東条に関しては保阪氏の他の著作に詳しいが、実は役人的な人材であったことが今回の本からもよくわかる。






私は海外生活が長かったが、海外においては同じ敗戦国のリーダーとして東条をヒトラーになぞられる人が多い。しかし、ヒトラーは悪い意味で人を引き付けるカリスマ性を有していたが、東条はただ真面目で自己愛的であり、非常に限定的な意味での「応用力を発揮することが苦手なエリート的人物」だったのかなあ、という感想を抱いてしまった。




(ヒトラーに関してはこちらが非常に興味深い一冊。必読)


感じるのは、戦時中に当時の政治家、軍人たちがいかに「天皇」という立場を政治的に利用していたか、という点だ。

実はこの傾向は現政権においても認められるようだ。

いずれにせよ、当時「畏れ多くも天皇陛下の!」や「かしこくも天皇陛下の!」などと下っ端の兵隊には威勢よく叫んではいたが、なんのことはない天皇に対してもっとも不敬であったのは当時の上層部の軍人や政治家であったということがよく理解できる。

昨年は日本の「侵略戦争」という言葉の使用についていろいろと議論があった。特に70年談話の発表に際しては実に大きく議論されていた。これに関しても本書の著者らは「大東亜政略指導大綱」を引き合いに題して、実に冷静に議論している点、非常にわかりやすく勉強になった。

日本の太平洋戦争をめぐる歴史問題を議論するときに、常に問題に感じるのは、そこに感情が前面に押し出されることだろう。近隣諸国からの意見もそれに対する国内の意見も感情をむき出しにしてしまう。

しかし、冷静に考察することがなにより大事だ。知性の証拠といってもいいだろう。

著者らも本書の中で意見を述べているが靖国問題などには実録は細かい言及を避けているようだ。これは残念なことだ。
靖国が国際問題になってしまうこと。靖国寄りの意見/パフォーマンスを繰り広げる政治家たち。これらの事実が純粋に肉親を洗浄で失った遺族の気持ちをどれだけ苦しめているのか、ということを考えると昭和天皇自らのスタンスが実録に明言されていないことは不満な点ではあろう。

すでに「ト部日記」「富田メモ」などから昭和天皇のスタンスは明らかになっているように思えるが、それをぼかすのは国内の政治的配慮のせいなのだろうか、と門外漢の私は勘ぐってしまったりもする。


(靖国問題に関しても保阪氏の著作は大変に勉強になる)

日本では死んでしまった者、過去の誤ち、こういったものを時とともに「許す」ことが美徳になっている面がある。

現代社会でも「あのひとがそこまで言うのだから・・・」とか、明らかな失敗をした後でも「あの人は年長者だし、この世界に長いから何も責めないでおこう」という考えが何となくある。

この日本人的な美徳はそろそろ捨て去らないといけないのかな、と思う。
こうやって守ってもらった「失敗をした人材」はたいてい反省はしないし、結局は今度はもっと大きな失敗を繰り返すことになる。

本書を読んでいると、日本は昭和史の中で、間違いを犯した人を十分に追及していない歴史があるのではないか、と感じた。
だから、過ちが繰り返されるのではないか、と思う。

これからはどの年代が犯した過ちであれ、「ダメなことはダメ」といえる社会になるべきだろう。
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  • Date : 2016-01-03 (Sun)
  • Category : 書籍
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