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リドリー・スコット製作、ドラマ版「高い城の男」

PKディックの名作「高い城の男」がリドリー・スコット監督によってドラマ化された。

ようやく配信されたそのパイロット版は満足の出来だ!

今回は「高い城の男」を巡るあれこれ・・・。


高い城の男高い城の男
(2012/11/30)
フィリップ・K・ディック

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アマゾンがオリジナルドラマ配信をアメリカで開始した。
その第一弾のラインナップで製作されたのが本作にあたる。

PKディックの原作を製作総指揮で映像化したのは、リドリー・スコット。
同じくディック原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?」を「ブレードランナー」として見事に映画化したスコット監督だけに期待が高まる。


アンドロイドは電気羊の夢を見るか?アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
(2012/08/01)
フィリップ・K・ディック、浅倉 久志 他

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【映画チラシ】ブレードランナー/リドリー・スコット//洋画/SF【映画チラシ】ブレードランナー/リドリー・スコット//洋画/SF
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ワーナー

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(現在スコットの製作総指揮で続編製作準備中)

今回、配信されたのはまだパイロット版1時間のみだが、この先シリーズ化されることが決定している。

日本とドイツが第二次世界大戦に勝利し、アメリカが両国によって分割統治されている「もうひとつの世界」が舞台となって展開する。

今までも歴史改変ものというと様々な優れた作品とその映画化作品があった。
ドイツなど枢軸国側が戦争に勝利した世界を描いた作品代表としてはレン・デイトンの「SSGB」ロバート・ハリス原作の「ファーザーランド」、日本からは押井守/藤原カムイの「犬狼伝説」などが挙げられる。
「ファーザーランド」はルトガー・ハウワー主演で映像化もされており完成度が非常に高い。


SS‐GB〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)SS‐GB〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
(1987/06)
レン・デイトン

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ファーザーランド (文春文庫)ファーザーランド (文春文庫)
(1992/11)
ロバート ハリス

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Fatherland [VHS] [Import]Fatherland [VHS] [Import]
(2001/05/15)
Rutger Hauer、Miranda Richardson 他

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また知的論考として非常に興味深い本として保阪正康氏の「仮説の昭和史」も必読だ。


仮説の昭和史 上  昭和史の大河を往く第十二集仮説の昭和史 上 昭和史の大河を往く第十二集
(2012/07/21)
保阪 正康

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しかし「高い城の男」の原作は単なる歴史改変にとどまらずSF的発想を持って現実と非現実の境界があいまいになるディック独特の世界観で描かれている点においてほかの歴史改変ものとは一線を画している名作だ。

ディックの小説は後半になると破綻する傾向を持っているのだが、「高い城の男」は後半にいたってもプロットがしっかりとしていて、それ故に広く評価されている作品といえるだろう。

原作の巧みさは「高い城の男」という本の中に描かれた「日本とドイツが戦争に勝利した」という「現実世界」の中に「イナゴ身重く横たわる」という「アメリカが戦争に勝利する」という「歴史改変小説」が存在しており、その「イナゴ身重く横たわる」という小説が読者である我々の「現実世界」を描いているという二重構造にある。この現実と非現実の境界が曖昧になり、「高い城の男」の中の登場人物が読者の世界の「現実」に入り込んでしまう表現も挿入されたりする。つまり読者にとっても現実と非現実の世界が混ぜ合わされる体験をさせられることになる。

このような表現形式を持っている書籍は珍しく、それをさりげなくやっているディックの作者としての「技」には驚嘆するしかない。

「現実と非現実」、「オリジナルと非オリジナル」の境界の曖昧さはディック作品の大きなテーマでもある。
ディックは「ブレードランナー」の原作である「アンドロイドは電気羊の夢を見るのか」においても同様のテーマを描いている。映画では「レプリカント」と表現されたアンドロイドたち。人間以上に人間に近づいたアンドロイドははたして現実の「人間」とどう違うのか?「模造記憶」「ユービック」といった名作群においてもディックが一貫して表現したのは我々が「現実」として当たり前のように認識している物事の危うさだ。


ユービックユービック
(2013/01/25)
フィリップ・K・ディック

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もし可能であればディックの作品は英語の原文で読んでみた方がいい。日本語の翻訳が悪い、というのではなくディック自身の独特の言い回しなどを理解するためには、やはり原作の表現が一番いい。だから日本語版を横に置きながら英語版を読んでみると非常にわかりゃすいのではないかと思う。こういう読書法もディックのような優れたSF作品を読むには知的刺激に満ちていて楽しいはずだ。


The Man in the High CastleThe Man in the High Castle
(2012/01/24)
Philip K. Dick

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さて、今回製作されたドラマ版の分析に移ろう。
日本に関してはケリー・ヒロユキ・タガワ氏が安定した演技を発揮している。若干日本のステレオタイプ表現が気にはなるが(合気道の道場に薬局の宣伝が掛け軸で飾ってあったり・・・「ブレードランナー」の「強力わかもと」のCMへのオマージュかもしれないが・・・)、原作そのものにも日本表現にはややステレオタイプ化されている一面はあったので、ある意味忠実に原作を反映しているのかもしれない。
日本統治下のサンフランシスコの街角などは不思議な漢字/日本語表現が並び、これはこれで「ブレードランナー」っぽい感じもする。



スコット監督はTVドラマにもその才能をすでに発揮しており(「大聖堂」とその続編ではケン・フォレットの原作を見事に映像に昇華させていた)今後の展開が楽しみだ。

原作とはいくぶん違った設定になっている。

まずアメリカの分割統治状態。

こちらが今回のドラマ版の統治体制

man+in+high+drama_convert_20150308112653.png


それに対して原作は

Imane_convert_20150308112438.png




さらに原作内に登場し重要な意味を持つ小説「イナゴ身重く横たわる」はドラマ版では16ミリフィルムになっている。



今後の展開が実に楽しみだ。

最後にディック自身が「高い城の男」の続編を構想していたことについても触れておく必要があるだろう。

ディックは実は続編を一度途中まで執筆している。「Ring of Fire」と題されたこの作品ではナチス将校が時間旅行をして枢軸国が負けている歴史(つまり現実の世界)を垣間見る姿が描かれている。ただディック自身、ナチスの姿を描くのがつらかった旨をのちに述懐しており、共著者ともに執筆したいと願っていたそうだ。

ちなみにディックのもうひとつの代表作である「ヴァリス」は「高い城の男」の続編として執筆が開始されたが途中で全く新しい作品になったとされている。


ヴァリス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)ヴァリス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
(2014/05/09)
フィリップ・K・ディック

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いずれにせよ「高い城の男」に注目が集まるのはいいことだ。


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  • Date : 2015-03-08 (Sun)
  • Category : 書籍
1

Comment

  1. RAS

    RAS

    2015-07-25 (Sat) 16:26

    はじめまして。失礼してコメントいたします。
    『イナゴ身重く横たわる』に描かれた世界は、現実の歴史とも異なる姿だった(米ソではなく米英が世界を二分している)と記憶しています。その上、『イナゴ』が書かれた方法が××によるものだったというのが、一層「現実とは何なんだろう」という読者の不安感を煽るように感じます。

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