プロフィール

maribu

Author:maribu
FC2ブログへようこそ!

FC2カウンター
48

マグネシウムがめぐりめぐって神経の病気へ・・・

京都大学の庫本博士と芹川教授らの研究グループが生まれつき脱髄を起こすマウスからその原因遺伝子を特定した。
特定された遺伝子はミトコンドリアの内膜に存在するマグネシウムの通り道、マグネシウムチャネルのものだった。

「脱髄」といわれてもピンと来ないかもしれない。
しかし、これは多発性硬化症などの難病を人にも起こすのだ。

その重要な病態にイオンであるマグネシウムが重要な役割を果たしていた。
科学および医学の大きな発見だ。

世の中では「ミネラル」や「マイナスイオン」などとよく言われるが、これらの言葉が示しているのはマグネシウムイオンなどの「イオン」ことだと思われる(もっともマグネシウムは陽(プラス)イオンだが・・・)。しかし、マスコミなどでこれらの言葉が使われるときには必ずしもその本当の重要さ(科学的意義)が理解されているからではないようだ。
ただ、なんとなく横文字の「マイナスイオン」という言葉が持つ「体によさそう」という漠然としたイメージだけで、扱われているような気がする。実際、「マイナスイオンが体にいい」という意味が私にはまだよく理解できない・・・。

そこで、中途半端な説明では満足できないであろう当ブログの読者の皆さんと一緒に今回の発見についてしっかりと考えてみたい。



Ion Channels and DiseaseIon Channels and Disease
(2000/01/15)
Frances M. Ashcroft

商品詳細を見る

<イオンチャネルと病気について書かれた最高の書籍。邦訳が待たれる>
まず生体の中でイオン(マグネシウムやカルシウム、カリウムなどのイオン:電解質とも言う)は重要な働きを担っている。それは「圧力を保つ」ということだ。細胞の中にはさまざまな器官がある。核、ミトコンドリア、小胞体などなど・・・。しかし、これらの物質が狭い細胞の中にめいいいっぱい閉じ込められたら、細胞内の内圧が高くなって爆発して死んでしまう。

ちょっと話がそれるが「植物の細胞と生物の細胞の違いはなんですか?」と小学校の理科の時間に聞かれたことを記憶している人も多いだろう。答えは「植物の細胞には細胞壁があります」になる。
実は植物の細胞はこの細胞内の高まる内圧に対抗して細胞の形をとどめるために細胞の外側に硬い壁を作る、という戦略をとったのだ。ところが、硬い壁があるので動けなくなった。動物はそれでは動き回ることができない。そこで細胞壁の代わりに、イオンの細胞内外の濃度格差を使って高まる圧力の緩和を行ったと考えることができる。

イオンによる濃度格差が作り出す力は絶大だ。ナメクジに塩を振りかけたときの変化を思い出してみれば一目瞭然だ。塩(塩化ナトリウム)がナメクジの表面で溶けてイオンに分離されて、大きな浸透圧の違いを生み、たちまちナメクジはしぼんで死んでしまう。

これらについて細かく知りたい方は弊社発行の「復活の日で読み解くバイオロジー/第2巻・ウィルスは誰が発見したのか」を是非、お試しください(定価200円)。

2

お求めはこちらから。


さて、今回の京都大学の発見はこのイオンの通り道であるイオンチャネルのうち、マグネシウムの通り道である「マグネシウムチャネル」に異常があると神経細胞の脱髄が起きる、というものだ。しかも、そのマグネシウムチャネルはミトコンドリアに存在しているという。

脱髄とは神経の周りを覆っている絶縁体「ミエリン(髄鞘)」が消失することである。ミエリンは神経の伝達速度を保つ上で非常に重要で、ミエリンがなくなると神経伝達が遅くなり様々な病気を引き起こす。代表的な病気が多発性硬化症だ。

では、ミトコンドリアのマグネシウムチャネルに異常があるとなぜ脱髄が起こるのか?

それは中枢においてミエリンを作る細胞である「オリゴデンロサイト」と呼ばれる細胞がミトコンドリアの機能不全により細胞機能異常に陥る。そのためミエリンの障害が発生し、さらにそれが免疫細胞の活性化を起こし、すでに存在している神経細胞のミエリンに攻撃を開始し、さらなる脱髄を起こす、と考えられているようだ。

すごい発見だ。

科学とはこういった発見の積み重ねで発展していく。

この発見が多くの脱髄疾患の患者さんを治療する上で大きな役割を果たすことになることを期待したい。

また、発見者の庫本博士ならびに芹川教授、研究室のスタッフに心から敬意を表したい。



スポンサーサイト
  • Date : 2011-01-11 (Tue)
  • Category : 科学
0

Comment

Comment Form

Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
0

Trackback

Trackback URL

検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
Return to Pagetop