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2001年公開「テイラー・オブ・パナマ」を考察する



「テイラー・オブ・パナマ」は007などのサスペンス映画、または「針の眼」や「鷲は舞い降りた」などの戦争サスペンススパイ映画とは全く異なる「皮肉を込めた静かなスパイ映画」と言えるだろう。

今回はこの作品を考察してみた。


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原作はジョン・ル・カレ。


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ジョン ル・カレ

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ル・カレはスパイ小説作家として知られるが、ル・カレの描写するスパイの世界では情報に踊らされる人間の姿が滑稽に、そして静かに描き出されることが多い。
映画化されたほかのル・カレの作品(「ロシア・ハウス」「裏切りのサーカス」)を見ても静かな展開の作品ばかりだ。


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「テイラー・オブ・パナマ」の舞台は題名の通りパナマだ。ピアース・ブロスナン演じる英国情報部員オズナードはアメリカから返還されるパナマ運河の売却を巡る情報操作を任務に現地に派遣される。オズナードは地元で仕立て屋(テイラー)を営む英国人ハリーの借金に目をつけて、金を魚に彼を情報屋に仕立て上げる。ハリーは次第にオズナードにとって都合のいい情報を仕立て上げるようになっていくが、そのでっち上げ情報がやがて英国政府やアメリカ政府までも巻き込むことになり・・・という展開だ。


題名の「テイラー」が示唆するのは「仕立て屋」のテイラーであり、スパイに仕立て上げられる(テイラーされる)ハリー自身であり、そして情報を英国情報員が喜ぶ形に仕立て上げる(テイラーする)ことである。
何とも英国人ル・カレらしいスパイスの効いた題名だ。

映画史の中でも実は面白い位置づけにある。

英国情報部員オズナードを演じるピアース・ブロスナンは同じく英国を代表する情報部員ジェームス・ボンドを演じたことでも有名だが、本作品は007シリーズの「トゥモロー・ネバー・ダイ」と「ダイ・アナザーデイ」の間に撮影されている。
ボンドを演じた俳優でル・カレ作品でスパイを演じたのはショーン・コネリー(「ロシア・ハウス」)についで二人目になる。


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またハリーの妻を演じたのはジェミー・リー・カーティス。カーティスは「ハロウィン」などに出演してパッとしない女優キャリアだったがジョン・ランディス監督の「大逆転」でブレイク。その後、ジェームズ・キャメロン監督の超大作「トゥルー・ライズ」でも本作と同様、スパイの妻を演じていた。


ブロマイド写真★ジェイミー・リー・カーティス/笑顔で寝転ぶブロマイド写真★ジェイミー・リー・カーティス/笑顔で寝転ぶ
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監督はジョン・ブアマン。「太平洋の地獄」で三船敏郎を演出したことでも知られるベテランだ。



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実はこの「テイラー・オブ・パナマ」には元ネタがある。

グレアム・グリーン原作の「ハバナの男(Our man in Habana)」がそれだ。


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「ハバナの男」はバティスタ政権下のキューバが舞台になっている。英国情報局に現地の情報屋として雇われた配管工の男が嘘の情報を本国に送る。しかし、やがてその嘘が現実になってしまう姿が描かれる。

グリーンは第二次世界大戦中に実際に英国情報部MI6で働いていた経験を持っている。当時、「ハバナの男」の配管工のように振る舞うドイツの情報部員を監視していたことがあり、その経験をもとにMI6に対する批判と皮肉を込めて執筆したのが「ハバナの男」だとされている。

グリーンは英国を代表する作家でありノーベル賞候補であったとも言われている。映画の世界でもキャロル・リード監督の名作「第三の男」の原作者としても知られている。この「ハバナの男」もキャロル・リード監督によりアレック・ギネス(「スター・ウォーズ」のオビ・ワン役)主演で映画化されている。


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ちなみにル・カレの代表作である「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」は近年、ゲイリー・オールドマン主演で「裏切りのサーカス」として映画化されたが、実は1980年に一度BBCでドラマ化されている。その際に主人公のスマイリーを演じたのもアレック・ギネスだった。「ハバナの男」がル・カレに与えた影響と言えるかもしれない。


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(アレック・ギネス主演によるBBCドラマ)


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「テイラー・オブ・パナマ」や「ハバナの男」が根底で訴えるのは情報戦に対する皮肉だ。

結局、人は自分の信じたい、自分にとって都合のいい情報しか信じない。そして都合のいい情報にしがみついて離れられなくなってしまう。さらに嘘の情報でもいつの間にか現実になってしまう。

第二次世界大戦中、日本は何度この過ちを犯しただろうか。そして、今日の外交問題においても同じ現象が続いている。

最後まで「テイラー・オブ・パナマ」を見るとよくわかるのだが、こういった誤った情報戦の裏では必ず「漁夫の利」を得るものがいる。犠牲になるのは常に弱者なのだ。

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  • Date : 2014-08-17 (Sun)
  • Category : 映画
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