原作は原著で読んでいたが(とてもわかりやすい英文なので英語の勉強に最適)、ドラマはアマゾンUKからDVDだけ買ってずっと見ていなかったが、ようやく見ることが出来た。
今回は前作から200年後の世界を描いている。
100年戦争を引き起こすエドワード3世の治世の物語となっている。
(ちなみに英国史は複雑で日本人には理解しにくい。英国に8年住んでいたので勉強しようと思っていろいろと本を読んだが、なかなか理解できなかった。そんな中で、この本はとてもわかりやすくてよかった!「ダーク・ヒストリー」というタイトルから俗っぽい感じがするが、図表や絵画が非常に多く、本当に理解しやすい。隠れた傑作だ!受験生にもいいかも)
原作のフォレットは黒死病をテーマとして劇的な物語が描けないか、と考えて作った物語とのこと。つまり人口の1/3から1/2が減少するほどの大幅なパンデミックの中でげきてきな人間関係が描けると考えた際に「大聖堂」の世界が再び使えると考えたようだ。
パンデミックの中の人間ドラマと言う点においては「復活の日」にも相当する作品と言えるだろう。
(こちら映画版。究極の「復活の日」DVDだ。特典映像にはアメリカで製作準備をしていたときの絵コンテの一部まで収録されている。映画ファンなら必見だ)
しかし、この作品のすごいところはエドワード2世の扱いだ。
歴史上、エドワード2世はホモセクシャルであることが知られていた。
その治世はそのホモセクシャルぶりから混乱したことが知られている。
土いじりが趣味であり、同性愛の愛人との奇功が政権を滅ぼしたともいえる。
ガスコーニュ騎士ピアーズ・ガヴェストンを愛人として入れあげてしまった。
エドワード2世は妻のイザベラ(フランス人:政略結婚だった)を差し置いてピアーズ・ガヴェストンに入れあげた。二人のラブラブな姿は後世においても画家に描かれたほどだ。
エドワード2世のガヴェストンへの愛はエスカレートし、ついにはガヴェストンをコーンウォール伯に指名。コーンウォール伯の地位は伝統的に王家にのみ与えられるものだったので物議を呼ぶ人事だった。
ガヴェストンに権力が与えられる中、諸侯が反乱。ガヴェストンをウォーウィック城に監禁。その後に処刑。
しかしエドワード2世は懲りなかった。新たな同性愛恋人としてヒュー・ディスペンサー親子と付き合い始める(親子で名前が同じなのでややこしい)。
これに怒った妻のイザベラ。フランスから夫のエドワード2世打倒を目指して息子エドワード3世とともにイングランドを侵略。
今回の「大聖堂 終わりなき世界」はここから物語が始まる。
しかし、すごいのはエドワード2世がホモセクシャルだった、という事実そのものは揺るがないものの、もう好き勝手に歴史を改変して物語が展開していく。
でもこれでいいのだ。
面白いし。
日本では「史実に忠実」ということにうるさすぎるのかも・・・。三谷幸喜氏が「新選組!」を大河ドラマで発表したときも「史実を違う!」という意見を言う人がいたが・・・まあ、目くじら立てなくても・・・と思ってしまう。
(個人的にはとても好きな作品だ)
なぜそう思うか、というと。フォレットは歴史に忠実であることにこだわって第一次世界大戦を舞台にした「巨人たちの落日」を発表した。
もちろんフィクションの作品だが、かなり歴史に忠実に描いたことをフォレットは告白している。
その結果・・・たしかに面白いのだがフォレットのほかの作品に比べると明らかにドラマチックさには欠けている感が否めないのだ。
傑作「針の眼」のような面白さは「巨人たちの落日」にはないのだ。
うーん・・・難しいものだ。
(こちら映画版。ちなみに監督は「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(帰還)のリチャード・マーカント。スター・ウォーズのファンも必見だ)
しかし、歴史を自由にドラマチックに使いこなした本作は面白い!
ちなみに前作の「大聖堂」を見ていなくても楽しめるが、観ておくと面白いのは言うまでもない。
特に「大聖堂」ではラストシーンで現代のキングスブリッジの大聖堂(もちろん架空の場所だが)が出てくるので、なんというか、この現代の姿に至るまでの歴史ドラマというか、ロマンというか際立つのだ・・・。
スポンサーサイト