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再見 ビリー・ワイルダー監督「情婦」

以前、当ブログではビリー・ワイルダー監督の「あなただけ今晩は」を取り上げた。

そこで今回は同じワイルダー監督でもガラッと雰囲気の違うミステリーの傑作「情婦」を取り上げたい。

アガサ・クリスティの原作を映画化した本作。
あらゆる意味で極上のミステリー・エンターテイメント映画だ。

タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒの二大スター。
ヒッチコック作品のようなスリリングな展開(後年、ヒッチコックはよく「情婦」の監督に間違えられたそうだ)
そして、なによりラストの意外なドンデン返し!

今回はこの作品をちょっと違った観点から考察してみたい。


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作品は金持ち未亡人の殺人事件で幕を開ける。
容疑者として逮捕されたのはしがない発明家の男(タイロン・パワー)。しかし、男には動機があった。未亡人は多額の遺産を彼に残していたのだ。
しかし、男は無実を訴える。男にはアリバイもない。唯一の味方になるのは彼の妻(マレーネ・ディートリッヒ)だけだった。
そして、男を巡っての息詰まる法廷戦が繰り広げられる!

この作品、スリリングな法廷劇として見るだけでも面白いのだが・・・少し深読みもしてみよう(間違った考察をしてしまったらお許しいただきたい)。

まず、英語表現で面白いなあ、と思ったのは「溺れる者は藁をもつかむ」ということわざ。
英語では「Drowning man catching razor blade(溺れる者は剃刀もつかむ)」と言うのだなあ、と勉強になった。

主人公の男を演じたタイロン・パワー。
「怪傑ゾロ」で知られるかつて大スターだ。


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「情婦」ではかつての二枚目スターから渋い中年へと新たな境地を開きつつあった。しかし「情婦」主演の直後、心臓発作でこの世を去ってしまった。
何とも惜しまれる。

ちなみにこの男を演じるにあたってパワーは一度は断ったそうだ。しかし、その後、新境地を開拓することに意欲を燃やしたパワーは演じる決意をしたのだとか。
ちなみにパワー以外に候補にあがった男優はカーク・ダグラス、グレン・フォード、ジャック・レモン、ロジャー・ムーアだったとか。

皮肉にもこの作品ではパワーが演じた主人公の弁護士は映画の中で心臓発作に苦しんでいる設定になっている。
この弁護士を演じたのはチャールズ・ロートン。
弁護士と看護婦のコミカルなやりとりがこの作品の魅力のひとつだが、実は看護婦は原作には登場しない。映画製作者たちが加えた絶妙な味付けだ。

この看護婦を演じたのはエルザ・ランチェスター。
実生活ではロートンの妻だ。
二人の息がぴったりなのも納得。

そして、男の妻を演じるのはマレーネ・ディートリッヒ。

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100万ドルの保険がかけられるほどの脚線美を誇った名女優だ。
この作品出演当時は56歳だったが、その脚線美は大胆に披露されている。

少し、考察をしてみよう。

主人公の名前に仕掛けがあるように思われる。
少しネタバレになるのだが・・・。

パワーが演じた主人公の名前は「レナード・ボール」

ボール(Vole)とは・・・ハタネズミ。または「ゲームでいかさまをして一人勝ちをすること」、さらに「go to vole」とは大きな報酬を得るためすべてを賭けるという意味の慣用句になる。

すでに見たことのある人なら納得だろう。

最後にちょっとひねくれた深読みをしてみよう。

この作品の全体を見ると、映画全体の仕掛けとして英国人を皮肉っている面があるのではないだろうか?
この作品の舞台はロンドン。
しかし、これはアメリカ映画だ。

映画全体がトリックとして観客をミスリードする構造において重要なポイントは容疑者の妻がドイツ人である、という点だ。

英国人は戦後(「情婦」が製作された頃)ドイツ人に対して不信感が強かった。彼らは「英国=紳士」「ドイツ=野蛮なうそつき」という潜在的なイメージを持っていた。

「ドイツ人なら汚いことをやりそうだ」そういうイメージがマレーネ・ディートリッヒ演じる主人公の妻に無意識に向けられるのだ。

しかし、この映画の監督ワイルダーもディートリッヒもドイツには思い入れがあった。
二人ともナチスを嫌ってはいたがドイツは「故郷」でもあった。
故郷は複雑な気持ちを持っても捨てることができない。

ディートリッヒはもともとベルリン生まれだ。ナチスを嫌ってハリウッドにわたってアメリカの市民権を獲得した。しかし、ドイツへの郷愁は忘れられなかった。戦後、ドイツへの愛を公式に発言していたし、死後、その遺体はベルリンに葬られた。

ワイルダーもそうだ。ワイルダーはオーストリア・ハンガリー帝国のユダヤ人の家族に生まれた。
ナチス台頭前はドイツで映画監督として活躍していた。
ナチスの台頭に伴いフランスに亡命(ナチスが台頭していくきっかけとなったドイツ国会議事堂放火事件の真っただ中に亡命していった)。のちにアメリカに渡り成功していった。

しかし、いかに故郷を追われたといっても故郷とは捨てがたい・・・そういうものだ。
少なくともワイルダーもディートリッヒも英国人やアメリカ人が持っている「アメリカ、イギリス=正義の味方」「ドイツ=悪の権化」といった単純な歴史観は持っていなかったはずだ。

そういう目で見ると「情婦」の違った側面が見えてくる。

「ドイツ人=悪人」という観客の見かたを逆手にとった映画全体のミスリードのトリック。
そして、伏線になっている傍聴席にいる「被告の哀れさに涙を流す英国女性」の存在。

この「涙を流す英国女性」は英国を象徴しているのではないだろうか。
この女性は映画のラストで大きな意味を持ってくるのだが・・・まさに英国だ。

第二次大戦前の大国による帝国主義を率先し、数々の植民地政策で世界を混乱させ深い悲しみをもたらした英国。その英国が、そういった過去を顧みることなく、自分の手を染めずに「おいしいところ取り」をしようとする。その一方で、哀れな人に涙を流して「紳士/淑女ヅラ」をしてみせる。

この作品は、それを大いに皮肉っているのではないだろうか?

あらゆる意味で一見の価値のある傑作だ。



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  • Date : 2012-07-01 (Sun)
  • Category : 映画
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