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恐るべし!レイモンド・ブリックス。日本未刊行の「Unlucky Wally」

レイモンド・ブリックス(またはブリッグズ)は英国在住の絵本作家で日本では「さむがりやのサンタ」などで有名だ。


日本では「心温まる童話」を描く「心優しいブリッグスおじさん」のような印象で売りだされている傾向があるが・・・。その実態は非常にブラックでシニカルな笑いを追求している・・・という考察は以前、このブログでも取り上げた(該当記事はこちら


そんなブリッグスの作品、多くは日本語訳が発売されている。
しかし、1987年と89年に出版された「Unlucky Wally」と「Unlucky Wally 20 Years On」の二作は未だに日本語版は発売されていない。

なぜか?

お上品な読者の皆さんは要注意!
「ブリッグスおじさんの夢を壊すな!」と言いたくなるかもしれないので、そういった読者の方はこの先を読むのは控えたほうがいいかも・・・。


Unlucky WallyUnlucky Wally
(1987/04/13)
Raymond Briggs

商品詳細を見る

(この変哲もない男性の物語が・・・)
この「Unlucky Wally」と「Unlucky Wally 20 Years On」は発売時からイギリス新聞各社の書評で散々罵倒された。
中には「出版元はこのような絵本を刊行したことを恥と思え!」と評した大手新聞もあったほどだ。


しかし、この不愉快な作品、ブリッグスのほかの作品とともに読むと、本当は実に味のある奥の深い作品であることに気付かされる。
表面的に見て、不快感を露わにする評論家がいかに「浅い」かがよくわかってしまう。

日本語版がないので、ここで細かく内容を紹介したいと思う。

ウォリーは29歳の男性。とにかく不運な男だ。
前半は彼がいかに不運かが「これでもか!」とばかりに描かれる。歩けば転ぶ、旅行に行けば雨になる。ホテルに泊まればダニだらけ、レストランに行けば変な客のとなりに座らされる・・・等々。

しかし、後半になると、ウォーリー自身にも大きな問題があることが「これでもか」と語られていく。

女の子にモテようろ思って筋力トレーニングの機械を買っても力が弱くてなにもできない、くらいならまだいい。
ブリッグスは容赦なくウォーリーの問題点を暴き始める。

「脇汗がすごい」
「人前で鼻くそを掘る」
「耳くそをほった後、爪に挟まった耳糞をじっと見ている」
「鼻をかんだあと、ティッシュの鼻水をじっと見ている」

これがブリッグスの愛らしいイラスト(?)で詳細に提示される。

読み進んでいくと「病気マニアだ。病気に関する本を読むと自分がその病気だと思って、何度も何度も病院に行く」と説明するので「それはまあ、自分の体を大切にしている、ってことで、・・・」と思ってページをめくると・・・・。

「ある日、ウォーリーは自分の金○の大きさが微妙に左右不均衡であることを発見しました。心配になったウォーリーは父親の大工道具を借りて線引きやコンパス、挙げ句の果てには水平器まで使って左右の金○の大きさを詳細に調べて病院に行って先生に相談しました」・・・・って・・・オイ!!

しかもウォーリーが金○の大きさをコンパスだの水平器を使って調べている様子がこれまた絵本として詳細に描きこまれているのだから度肝を抜かれる。

「さむがりやのサンタ」しか読んだことのない上品な読者が読んだら卒倒するかもしれない内容だ。


さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)
(1974/10/25)
レイモンド・ブリッグズ

商品詳細を見る

(信じられるか!この温かい物語を描く人が!・・・って「さむがりやのサンタ」も実は結構ブラックな気が・・・)


さて、こうして何やら不愉快なウォーリーの様子が淡々と(?)綴られていくのだが、最後に一応オチらしいものがつく。
それは「ウォーリーはみんなに好かれてはいません。でもひどく嫌われている、ということもありません。だから彼は彼なりに幸せです。それに・・・ウォーリーの両親はウォーリーのことが大好きです」
となって物語は終わる。最後の絵は両親に囲まれて幸せそうなウォーリーの笑顔が描いてある。

一応ハッピーエンドかな・・・と騙されそうになるが、「そんなわけないだろ!」と突っ込みたくなる。

いったいこの作品はなんなんだ?どういう意味があるのだ?
と疑問ばかりが頭をめぐる。

しかし、その回答は2年後に発表されたこの作品の続編「Unlucky Wally 20 Years On」の中にあるのだ。

ここまで読むと実に深い作品になるのだ!


Unlucky Wally Twenty Years onUnlucky Wally Twenty Years on
(1989/05/25)
Raymond Briggs

商品詳細を見る
(写真がなくて残念!)

この「Unlucky Wally 20 Years On」は前作から20年後、ウォーリー49歳の姿が描かれる。
で、今度は心温まる作品か、というと・・・ぜーんぜん、そんなことないのだ。

まずは軽くアンラッキーな毎日が描かれる。

「ウォーリーはプールに行きました。中でションベンをしている子供を見つけたりして泳ぐのがイヤになりました」
「今度は泳いでいたらなにか黒い塊がありました。なんとそれは、子供が漏らしたウ○コでした」

はぁ~

さらに災難はウォーリーの外見にも・・・

「ウォーリーはある日、モテる男はみんな片耳にピアスをしていることに気づきました。そこでウォーリーも片耳にピアスの穴を開けました。そしたらひどく化膿しました」
さらには
「白髪が増えたので、かっこいい色に染めました。大変なことになってちんちくりんになりました。ようやくうまく染められるようになってきたら今度は髪がなくなってハゲになりました」

・・・・。

絵本の中盤でウォーリーの両親が他界してしまう。
ここで物語はシリアスになるかと言うと・・・全然なのだあああ!

「両親がいなくなって寂しくなったウォーリーはビデオ鑑賞にハマりました。彼はポルノビデオが大好きです」

オイ。

「でも、ウォーリーは童貞です」

オイオイ。

「ある日、一大決心をしてデリヘルを頼みました」

オイオイオイ。

「でもビビってアソコは役立ちませんでした」


オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ!!!


もう勘弁してくれ、な内容だがブリッグスは勘弁してくれない。

「デリヘルで役にたたなかったウォーリーは自分がゲイなのではないか?と不安になりました」
「そこで裸になって鏡を見ながら自分の胸を揉んでみましたが興奮しません。お尻もアソコも触ってみましたが女性的な興奮はありませんでした(これがまたきちんと絵で表現されている)」
「ついには女性の裸のエロ本と男性の裸のエロ本を並べて鑑賞してどちらが興奮するか試してみました」
「結局、女性の裸のほうが興奮することがわかったので安心しました」

いい加減にしてくれ、という展開になる。



「それにウォーリーにだって憧れの女の人はいるのです。彼が子供の頃の初恋の相手です」
「ウォーリーはいつも彼女のことを考えて幸せな気持ちになります」

これを読んで少し物語がマトモになるな、と一瞬思ったが、すぐに後悔した。

続く文章はこうだ。

「でも、ウォーリーは知りませんが、彼女は16年前に他界しています」

・・・って、オイ!

「ウォーリーは頭の中で彼女のことを想像すると、つい興奮してしまいます。しかし、彼女を想像しながらマスターベーションをすることはさすがに神聖な者を汚すような気がするので控えています」

おいおいおいおいおいおいおいおい!

「でもウォーリーにもいいことがありました」

(やっとか!よかった)と思うと甘い。

「実は気にしていた金○が本当に病気になったのです。おかげで早期発見ができましたが、片方取ることになりました」

もう・・・・

「ウォーリーはそれ以降、パンツの中にまるめた粘土を入れています」

いいよ!そんな説明しなくたって!

そして最後は・・・

「ウォーリーはときに寂しくなるときもあるけど・・・両親がいないことにも漸く慣れてきました」
「ひとりぼっちで、彼女も恋人もいないけど、まあまあ楽しい人生だったな、と思うこのごろです」

で物語は幕を降ろす。

ちょっと切ないエンディングだ。

これだけ読むと「悪ふざけ」に見えるかもしれない。
しかし、私はここから真面目にこの作品が「ブリッグス最高傑作のひとつ」であることを論じる。


この物語でブリッグスが描こうとしたのはなにか?

それはウォーリーが母親の遺体と対面する場面にすべての回答がある。
文章では「ウォーリーは母親の遺体に対面しました。母親の入れ歯は滅茶苦茶に詰め込まれていてキスしようとしたら歯にぶつかりました。枕のところには病院のものでしょうか、ティッシュの箱と粉洗剤が置かれています」

なんてことはない文章だ。ウォーリーは母親の遺体までもがアンラッキーに扱われた、というブラックユーモアのようにも感じられるかもしれない。

ところがこれが違う。

このシーンを理解するためにはブリッグスのもうひとつの最高傑作「エセルとアーネスト」を読まなければならないのだ。


エセルとアーネストエセルとアーネスト
(2007/12/10)
レイモンド ブリッグズ

商品詳細を見る


「エセルとアーネスト」はブリッグスが自らの両親の半生を描いた力作だ。庶民の英国史として読んでも非常に価値の高い、それでいて文学性も高い傑作中の傑作だ。

この「エセルとアーネスト」でブリッグスの母親が他界する場面がある。
遺体の安置室で冷たくなった母と対面したブリッグスはやるせない思いをぶちまける
「入れ歯さえマトモに入ってない!しかもなぜ、母の遺体の枕元にティッシュの箱と粉洗剤があるんだ!なぜだ!なぜだ!」
それを聞いた父はひとこと「私にもよくわからんのだよ息子よ」と力なく答える。

「エセルとアーネスト」を読む限り、ブリッグスは母親とはあまりいい関係を築くことができなかったようだ。それだけに母親への想いが強く残っているのかもしれない。

ブリッグスは母が他界した同じ年に父親も失っている。

実はウォーリーもまた「同じ年に母と父を失った」と説明されている。物語の中では「二人を同時に失うことがウォーリーのアンラッキーさ」のように語られているが、実はこれは作者の実体験なのだ。

ここまで来ればわかるはずだ。ウォーリーは作者の分身なのだ。

最後から二枚目の絵で「ウォーリーは両親がいないさみしさにも慣れました」という下りでウォーリーはベッドルームに一人で佇んでいる。
「エセルとアーネスト」を読んだ人はよく見て欲しい。ウォーリーが立っているベッドルームはブリッグスの両親の住んでいた家のベッドルームだ。

ウォーリーは「人生の中の崇高な女性」として『初恋の女性と母親』の二人をあげている。
これは作者の偽らざる母への想いなのだろう。そして「初恋の人」とはおそらく、若くして死別したブリッグスの妻を象徴しているのだろう。ちなみにブリッグスの亡くなった妻には精神的な病気を患っておられ、若いうちに亡くなっている。ブリッグスはそれ以後、同棲に近い形で暮らしている女性のパートナーがいるが結婚はしてない(このパートナーは「水たまりおじさん」の中に声だけ登場している)。


水たまりおじさん水たまりおじさん
(2005/06)
レイモンド ブリッグズ

商品詳細を見る

(これはブリッグスが自身をモデルとして義理の孫との奇妙な交流を描いた作品だ)

これらのことを前提にして読むと、「unlucky Wally」シリーズ二作は実に私的な奥の深い「女性」へのブリッグスの想いが込められた作品であることに気付かされる。

見た目の下品さに惑わされると本質が見えないのだ。
「本質を見る目」を養いたいものだ。


さて、最後に「Unlucky Wally 20 Years On」の裏表紙・・・。

これがまたブリッグスらしい。

「Unlucky Wally 20 Years On」について述べられた新聞各紙の酷評の数々が並べ立てられている。
そして、画面下にはウォーリーが立っていて「これをお母さんが見たら、なんて言うかな・・・」とつぶやいている。

やはり、ブリッグスという作家、一筋縄ではいかない・・・・。
只者ではない。


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  • Date : 2011-10-19 (Wed)
  • Category : 書籍
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