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レイモンド・ブリッグスという「作家」

レイモンド・ブリッグス(またはブリッグズ)といえば「さむがりやのサンタ」などの心暖まる絵本作家と考える人が多いだろう。
しかし、ブリッグスは本当に「子供の絵本作家」なのだろうか?

さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)
(1974/10/25)
レイモンド・ブリッグズ

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ブリッグスは今年76歳になる。あまりプライベートは明らかにしないタイプの作家らしい。
ブリッグスの全作品について最もよく知ることができるのは、この「Blooming Books」という題名の全作品の解説書だ。

Blooming BooksBlooming Books
(2003/10/02)
Raymond BriggsNicolette Jones

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しかし、この解説書をみるとブリッグスの描いた著書のほとんどが子供向けではないことに気づかされる。もちろん「ゆきだるま(別名スノーマン)」や「くまさん」のような子供向けの作品も多い。

スノーマン (児童図書館・絵本の部屋)スノーマン (児童図書館・絵本の部屋)
(1998/10)
レイモンド ブリッグス

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「ゆきだるま(スノーマン)」などの絵本を見るとブリッグスのことをディズニーのような子供に夢を与える好々爺というイメージを持つかもしれない。
しかし、ブリッグスの作品を細かく読んでいくと実は独特の「ブラックユーモア」の持ち主だということに気づかされる。
まず、この「Blooming Books」という豪華本。300ページ近くあるハードカバーで美術書のようだ。ところがこの本にある著者近景の写真ときたら・・・・。なんとブリッグスが歩行器(高齢者向けの四本足の歩行補助用のもの)のそれぞれの足に雑巾をくくりつけて、しかめっ面をして家の中を徘徊している写真なのだ。

子供向けの代表作とされている「さむがりやのサンタ」にしても実はブリッグスらしいブラックユーモアが効いた作品なのだ。
日本人のわれわれには抵抗はないのだが、実は「さむがりやのサンタ」の中には西洋において物議をかもした表現が使われている。それはサンタがお尻を出してトイレに座っているシーンだ。熱心なキリスト教徒の間では「キリストの誕生を祝うクリスマスにおいて大事なサンタを侮辱した」と論争になった。後年、ブリッグスはインタビューの中でアメリカ人女性から「全世界の子供に謝罪しろ」という手紙を受け取ったと告白している。
ところが、「さむがりやのサンタ」の続編である「サンタのなつやすみ」において、なんとブリッグスは反省するどころか、強風に吹かれてお尻を丸出しにて吹っ飛んでいくサンタの絵を描いてしまう始末。

つづいて発表した「いたずらボギーのファンガスくん」はその愛らしい日本版タイトルとは裏腹に「キタナイことが最高の価値観である世界」に住んでいる怪物一家の姿を描いたブラックユーモア満点の作品。

Fungus the Bogeyman (Picture Puffin)Fungus the Bogeyman (Picture Puffin)
(2005/05/16)
Raymond Briggs

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つづいてブリッグスが描いたのはジムとヒルダの老夫婦の物語。
老夫婦を描いているあたり、すでに子供向けではないのだが・・・。
まず「ジェントルマン・ジム」。

Gentleman JimGentleman Jim
(2008/09/23)
Raymond Briggs

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公衆トイレの管理人のジムが人生を変えるべく義賊になることを決意するが、彼の夢は現実の法律のもと裁かれることとなり・・・。という内容。一般的にはブリッグスが教養に欠けていながらも純粋に生きる中流階級のイギリス人を皮肉とともに問題提起した作品、とされている。しかし、当の本人は執筆の動機を聞かれた際には「私のパートナー(ブリッグスは1973年に妻に先立たれ以後、結婚はしていないが、内縁の妻ともいえる女性パートナーがいる)の息子が7歳のときに『学校に行くのがいやだ』とゴネたんだ。そのときに『じゃあ、なにをしたいんだ?』と聞いたら『森に入って家を建てて、うさぎを捕まえて火をおこして食べて生きるんだ』と言ったんだ。だから『そんなことはできるわけないだろう。勝手に他人の土地で火をおこしたら警察につかまる。うさぎにしたって所有権は土地の持ち主にあるとされちゃうだろうし、現実にそんなことできるわけがないんだ』と諭してやった。そのときに『ジェントルマン・ジム』の物語を思いついたんだ」と語っている。義理の息子ともいえる7歳の少年の他愛のない夢を現実でぶち壊してやった経験をもとに作った物語と堂々と宣言してしまう辺り、本当にすごい人だ。ディズニーには真似できないだろう。

つづいて同じくジムとその妻のヒルダを主人公にした「風が吹くとき」を発表。

風が吹くとき風が吹くとき
(1998/09)
レイモンド ブリッグズ

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これはすごかった。ジムとヒルダの二人が核戦争に巻き込まれながらもひたすらに政府を信じて助けを待つ姿は全世界に衝撃を与えた。東西冷戦の中でジミー・T・ムラカミ監督の手で映画化されデビッド・ボウイのテーマ曲とともにヒットした。

もはや全く子供向けではない。


「風が吹くとき」には政治的なメッセージ性が感じられた。政治的な作品としては「風が吹くとき」以外にもフォークランド紛争とサッチャー政権を痛烈に非難した「Tin Pot Foreign General and the Old Iron Woman」もある。この作品でブリッグスはサッチャー首相をオッパイからミサイルを発射するバケモノロボットとして描いてみせた。
やれやれ・・・。

Tin Pot Foreign General and the Old Iron WomanTin Pot Foreign General and the Old Iron Woman
(1984/09/21)
Raymond Briggs

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そのあと、発表したのが傑作「エセルとアーネスト」。

エセルとアーネストエセルとアーネスト
(2007/12/10)
レイモンド ブリッグズ

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「ジェントルマン・ジム」と「風が吹くとき」の主人公であるジムとヒルダの夫妻は実はブリッグスの両親がモデルではないか、と長い間言われてきた。そこでブリッグスが両親の物語を漫画化したのがこの作品。
庶民のイギリス史ともいえる貴重な作品といえる(もちろんブリッグス自身も登場する)。


ブリッグスの一番新しい作品は「水たまりおじさん」

水たまりおじさん水たまりおじさん
(2005/06)
レイモンド ブリッグズ

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この作品、あまり日本では評価されていないようだ。
この作品「『さむがりやのサンタ』の作者による心あたたまる、おじいちゃんと孫の心の交流を描く作品・・・・」なんて考えると確かに物足りない。
でも今まで述べてきたように「ブラックユーモア満載の大人向け絵本作家の作品」としてみると全く違った魅力が見えてくる。
実はこの作品の登場人物であるおじいちゃんと少年は実はブリッグス自身とその孫がモデルなのだ。老年に差し掛かり、外に出るのもおっくうになった作者が孫に振り回される姿を描いた作品としてみると、実にユーモラスな作品として輝いてくる(自分を子供嫌いのがんこ爺として描く子供向け絵本作家がいるだろうか?)。

そんなブリッグスが現在執筆中の最新作は「老い」と「死」がテーマの白黒作品だそうだ。
シリアスな作品になるのか、それともブラックユーモアの効いた作品になるのか。いずれにせよ新作が待ち遠しい。



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  • Date : 2010-11-01 (Mon)
  • Category : 書籍
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