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他人が見ているものをコンピューターで再現する?

同じものを見ていても人によって印象が違う。目の中に入ってくる視覚の情報は膨大だ。その中から人間はどのようにして必要な情報をつみとっているのだろうか?
本日発売の学術誌「ネーチャー」にその辺についての研究が掲載されていた。
この研究はUCLAの脳外科に入院している患者さんの協力によって行われた。
研究に協力した人たちは薬物による治療が効かない、けいれん発作の患者さんたちになる。これらの患者さんたちは、けいれん発作を引き起こす脳の特定の部位を切除するという外科的治療の適応となるそうだ。まず最初に、けいれんを引き起こす脳の部分を正確に特定しなければいけない。そのため、脳のけいれんに関連があると思われる部位に電極を何本も埋め込み、実際の痙攣が起こるまで脳の電気活動を記録する必要がある。つまり、けいれんが起こったときに電気活動が活発になっている部分こそが手術で切除すべき場所ということになる。
この方法を用いると脳細胞一個一個の電気活動の記録をとることができるそうだ。
しかし、電極を埋め込んですぐに発作が起きるわけではない。つまり、患者さんたちは脳に電極を埋め込んだ状態でしばらく待たなければならない。そこで、その待ち時間の間に患者さんたちの承諾を得た上である実験が行われた。
まず、これらの患者さんたちに特定の有名人の写真を見せる。マリリン・モンローやマイケル・ジャクソンの写真が用いられたようだ。患者さんたちの脳には電極が埋め込まれているので、これらの写真を見たときに電気活性があがる細胞を特定することが可能だ。つまり、「マリリン・モンローに反応する脳細胞」や「マイケル・ジャクソンに反応する脳細胞」などが特定できるわけだ。
次に、モンローの写真とジャクソンの写真をダブらせたもの(つまり、写真にはモンローとジャクソンの肖像が重なって見える)の写真を見せる。このときに「モンローだけをイメージするように」と指示する。そのときの脳細胞の活性を調べたわけだ。
この研究者たちはそのときさらに一歩踏み込み、このときそれぞれの細胞の活性に基づきコンピューターのモニターに患者の脳が感じているイメージを再現させた。
ちょっとややこしいのだが、モンロー細胞の活性が高まればダブっている写真のモンロー像が強調され、活性が低くなれば写真のモンロー像が減弱される、という仕組みだ。これはつまり、被験者が視覚で捉えた情報をどのように頭の中で見ているかをコンピューターのモニターに再現する、という画期的な方法だ。

さて結果はというと、「モンローのイメージをして」と伝えると、60%以上の場合においてジャクソンのイメージが完全に除去されたのだそうだ。
これはつまり、人間は視覚としてモノが見えていてもその中から見たいものを選び取って見ている(つまりモンローのイメージだけを選び取り、ジャクソンのイメージは消し去ってしまう)ということだ。

「同じものを見ていても感じ方は人それぞれ」とよく言われるが、そのことが初めて科学的に証明されたことは面白い。
加えて、この技術には無限の可能性がある。ロックドイン症候群というのがある。脳や神経の障害などで意識がしっかりしているのにそれを外に表現することが出来なくなってしまう状態だ。つまり、ロックドイン症候群では思考を他人に伝えることができないのだ。しかし、患者さんの思考を映像化してコミュニケーションが取れるようにできれば、画期的な医療技術になる。今回報告されたシステムだとまだまだ原始的な状態でとても患者さんに利用できる状態ではないが、その方向に向かって一歩踏み出す研究成果といえる。この先、研究がすすんで多くの苦しんでおられる患者さんに応用できる日が来ることを願ってやまない。

詳しい内容はこちらのビデオクリップから・・・・




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  • Date : 2010-10-28 (Thu)
  • Category : 科学
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