プロフィール

maribu

Author:maribu
FC2ブログへようこそ!

FC2カウンター
1

ガッツ伝説とチャック伝説

一昔前に「ガッツ伝説」というのが流行した。元ボクシング世界チャンピオンのガッツ石松氏の奇抜な言動を集めた本は多くの読者を魅了した。

実はアメリカ人にもこの「ガッツ伝説」に匹敵するような人物がいる。

アクション俳優のチャック・ノリスがその人だ。

チャックは元空手世界選手権のチャンピオンで俳優としては『ドラゴンへの道』でブルース・リーの敵役を演じたことでも知られている。チャックの代表作はなんといっても80年代の後半から90年代にかけて製作されたアクション映画だろう。チャックはこれらの映画で肉体派ヒーローを数多く演じた。
思い起こしてみると80年代から90年代のハリウッド映画のアクションスターといえば、シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツネッガー、あとはちょっとマイナーだがドルフ・ラングレンやジャン=クロード・ヴァンダムらが思い浮かぶ。そんな中、チャックは異質なアメリカンアクションスターだった。

当時活躍していたスタローンたちアクションスターはいずれもアメリカを救うために映画の中で大活躍をしていた。しかし、よくみると、彼らはアメリカを救うためにために活躍しているにもかかわらず、「典型的なアメリカ人」ではないのだ。スタローンはイタリア系アメリカ人だし、シュワルツネッガーはオーストリア出身、ラングレンはスウェーデン出身、ヴァンダムはベルギー出身だ。
しかし、チャックは違った。
チャックは正真正銘のアメリカン・ヒーローだ。保守的な風土で有名な南部アメリカ、オクラホマ州の出身。ヒゲをはやしアメリカの平和を脅かす悪人どもをマシンガンで撃ち殺す。スタローンやシュワルツネッガーたちがほとんど上半身素っ裸で筋肉隆々の肉体美を見せつけたのに対し、チャックはアメリカの労働者たちを代表するかのように青いシャツにジーンズを身につけて両肩にマシンガンを抱えてみせた。これぞ「アメリカ」だ。
映画以外の私生活においてもチャックは頑なに「アメリカ人」だ。全米ライフル協会に所属し、熱心な共和党支持者。大統領選ではブッシュを支持し、キリスト教の熱心な信者で(キリスト教の熱心な信徒がマシンガンで人を殺す映画を作ることの矛盾については気にならないらしい。これも典型的アメリカだ)同性愛には強く反対を訴えている。

しかし、ここまで「アメリカ色」が濃いと、その出演作は一部の保守系のアメリカ人には受けるのだろうが、抵抗を感じるアメリカ人も少なくない。アメリカ以外の観客にはもっと受け入れられないことになる。唯一の例外がチャック主演の『デルタ・フォース』だろう。この作品は世界規模でもそれなりのヒットを記録したが、チャックの出演作の中ではむしろ異色で「アメリカ礼賛色」が比較的薄い作品になっている。そして、『デルタ・フォース』はチャックのその後の作品と異なり、チャックの一人舞台映画ではないということも挙げられる。しばしばチャックは演技力が低いことが指摘されるが『デルタ・フォース』では往年の名優たちが出演し、チャックの脇をしっかりと固めた。特に『ケイン号の叛乱』で知られるリー・マービンは『デルタ・フォース』が遺作になってしまった。しかし、ほかの名優たちは明らかにやる気がない。ジョージ・ケネディ(『エアポート』シリーズ、『暴力脱獄』)はほとんどヤケクソ気味の演技をしているし、ロバート・ヴォーン(『0011・ナポレオン・ソロ』、『荒野の七人』)にいたっては無気力にただ座ってボソボソと台詞を呟くだけだ。ケネディとヴォーンの二人は日本映画に出演した経験があるが(『人間の証明』、『復活の日』、『アナザーウェイ・D機関情報』)そのときの方が生き生きとした演技を披露していた。しかし、こういった名優たちの活躍(?)もあって『デルタ・フォース』は娯楽作として成立し、アメリカだけでなく世界の観客からも受け入れられた。
しかし、その後のチャック主演作は「チャック映画」に変わってしまった。チャック最大の全米ヒット作『地獄のコマンド』も世界規模では全く受け入れられなかった。日本でも公開はされたが地方公開に留まっている。私もこの作品は確かに劇場で見た記憶があるのだが、全く思い出せない。なにかの映画の併映だったと思う。最後にチャックが悪玉の大将にバズーカ砲を放っていたような記憶がうっすらとあるがほかはなにも憶えていない。そのほかのチャックの出演作も見たはずなのだが、『地獄のコマンド』と大同小異だったのだろう。全く思い出せない。

90年代も終わり、アクション映画の全盛時代が終わるとチャックの主演映画も激減した。
そしてインターネットの普及にともない「チャック伝説」ともいえる笑い話が広まり始めた。
あまりにも「アメリカ色」の強いチャックには「笑い」のタネがいっぱいあった。チャック伝説をネット上で募集したところ、多数の伝説が集まった。曰く、「チャックに噛み付いた毒蛇は一時間の苦痛の後に息絶えた」、「チャックの体毛は蜘蛛の糸より10倍弾力があり、50倍粘着力がある」、「銃が人を殺すのではない、チャックが殺すのだ(これは全米ライフル協会の標語を揶揄したもの)」などなど。
あまりの反響にチャック伝説を募集したサイトの管理人は、これらの伝説を本にして出版することを試みた。ところが、ここでチャック本人から横槍が入った。
チャックは弁護人を通して出版の差し止めを働きかけてきたのだ。自分が笑い者にされていると感じたのかもしれない。しかし、チャック伝説出版のニーズは高く、結局『Truth about Chuck Norris』が出版された。
予想通り、この本は好調な売れ行きをみせ、一時はベストセラーにランクインするほどだった。

ここでチャックが動いた。

チャックはこれらのチャック伝説からいくつかのエピソードを選び、「オフィシャル・チャック伝説」を出版したのだ。
『The Official Chuck Norris Fact Book』と題されたこの本で、チャックは自らの偉大さをまず前書きで強調し、自分には「チャック信念」があると説明し、チャックが選び抜いたチャック伝説ひとつひとつに解説を加えた。しかし、この解説は全く面白くないばかりか、それぞれの解説の後に「チャック信念」のコーナーを設け、さきに述べた信念に基づいて、良きアメリカ人であることに対する自分の心情を述べる(説教する)という実に(俗な表現を使えば)「ウザい」本になっているのだ。
そもそもチャック伝説本の出版に強い態度で反対しておきながら、いざ本が出版されて売れ行きがいいのを確認するや否や公式本を自らが出版し、さらにその公式本ではその伝説のもとになったサイトの管理者にはなんの言及もしない。それでいながら良きアメリカ人とはなにか、について論じる。ユーモア本のはずがかなり重い内容になってしまっている。


一方のガッツ氏はチャックとは対象的だ。ガッツ氏は「ガッツ伝説」が有名になるや、自らが公式本を出版した。ガッツ氏は自らが表紙となり(ヨン様の仮装までしてみせた)自分を笑い飛ばす内容の本の出版を積極的に支援した。それだけではない。売上の一部は新潟中越地震の義援金として寄付までした。


ガッツ氏は若い頃、大変な苦労をされたという。赤貧の中から這い上がり、世界の頂点に達するまでには、言葉では言い表せない多くの苦労があっただろう。あの屈強なガッツ氏が若い頃の苦労を思い出した途端に大粒の涙を流し始めたのをテレビで見た事がある。
若い頃の苦労がガッツ氏の懐を深いものにしたのだろう。自分に自信のある人物は自分のことを笑い話にされても揺らぐ事がない。しかし、自分に自信のない人というのは往々にしてわずかなことでも自分がバカにされたと感じて烈火の如く怒り出す。



懐の深いガッツ氏は結局は人を魅了するのだろう。
チャックは多くの主演映画があるが、その多くはチャックの弟が監督したものだった。一方のガッツ氏は脇役ながらリドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』やスティーブン・スピルバーグ監督の『太陽の帝国」に出演を果たした。

チャックはこれからも「生粋のアメリカン・ヒーロー」を演じて行くのかもしれない。しかし、たとえ脇役でもリドリー・スコットやスピルバーグといった監督の映画に出演することはないだろう。


地獄のコマンド [DVD]地獄のコマンド [DVD]
(2007/12/21)
チャック・ノリス

商品詳細を見る


チャック・ノリスの外見はアメリカの労働者そのもの。



The Truth About Chuck Norris: 400 Facts About the World's Greatest HumanThe Truth About Chuck Norris: 400 Facts About the World's Greatest Human
(2007/11/29)
Ian Spector

商品詳細を見る


チャック本




The Official Chuck Norris Fact Book: 101 of Chuck\\\'s Favorite Facts and StoriesThe Official Chuck Norris Fact Book: 101 of Chuck\\\'s Favorite Facts and Stories
(2009/10)
Chuck Norris

商品詳細を見る


公式チャック本(チャック本人の信念つき)




復活の日 DTSプレミアムBOX [DVD]復活の日 DTSプレミアムBOX [DVD]
(2002/03/22)
草刈正雄オリビア・ハッセー

商品詳細を見る


ジョージ・ケネディとロバート・ヴォーンの二人が共演した日本映画『復活の日』




Man From Uncle: Complete Series (41pc) (B&W) [DVD] [Import]Man From Uncle: Complete Series (41pc) (B&W) [DVD] [Import]
(2008/10/21)
Robert VaughnDavid McCallum

商品詳細を見る


ロバート・ヴォーンの往年の代表作『0011・ナポレオン・ソロ』がようやく豪華全作セットで販売となった。




Robert Vaughn: A Fortunate Life - An AutobiographyRobert Vaughn: A Fortunate Life - An Autobiography
(2009/01)
Robert Vaughn

商品詳細を見る


20年以上の間をかけて執筆されたヴォーンの自伝もついに販売された。





最驚!ガッツ伝説最驚!ガッツ伝説
(2004/07/08)
ガッツ石松&鈴木佑季EXCITING編集部

商品詳細を見る


太陽の帝国 [DVD]太陽の帝国 [DVD]
(2009/08/05)
クリスチャン・ベールジョン・マルコビッチ

商品詳細を見る


ブラック・レイン デジタル・リマスター版 ジャパン・スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]ブラック・レイン デジタル・リマスター版 ジャパン・スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
(2007/05/25)
マイケル・ダグラス高倉健

商品詳細を見る
スポンサーサイト
  • Date : 2010-10-09 (Sat)
  • Category : 書籍
0

Comment

Comment Form

Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
0

Trackback

Trackback URL

検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
Return to Pagetop